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携帯分解γ

大仰な次回予告がありましたが、これで最終回です。その予定です。
前々回『α』
前回『β』



大いなる謎 そのいち


ヒンジが外れて画面側のプラ枠を取ったところでひとつ変化:本体を畳んでも画面(メイン画面⇔サブ画面)が切り替わらなりました。

謎ってのはこれです。ヒンジ部分には開閉を検知する機構がなにも見あたらなかったってことです(光センサで検知とかじゃないのは使ってて知ってるし)。

おかしいなぁ。
プラ枠を元通り入れてみよう。
あ、切り替わった! 検知してる!
じゃプラ枠側になんか仕掛けがあるのかねぇ。

いろいろ試してみるとやっぱ謎です。
液晶の位置は関係なしに、プラ枠(見た目 ほんとにただのプラスチック型)が近づくだけで画面切り替わります。当然だけどそこら辺の適当なもんだと反応しない。プラ枠以外が近づいても切り替わらない。
ただのプラスチックいっこを区別して近づくの検知するなんてっ! 携帯すげぇっ!

なんとも奇妙な光景なので、ぜひ動画を。








どうしてこんなことが起こるのかはこれから先で明らかに!
……ならなかったような。



パネルを分離


さて、謎は謎として、とりあえず液晶パネルをできるだけ裸にするのが当面の目的なわけです。
ここで見てほしいのが下の写真。




ロールシャッハテスト。



プラ枠を外したLCDユニットを前に、しばし思案しました。
まだパネルは裸じゃない。次に外れるのはどこだろう、と。

上の写真だと見た感じ、いちばん外側に金属の枠があって、その内側に白い何かが見えて、すぐ内側は液晶パネルのガラス板です。

白い何かはいかにもスポンジっぽいなーと思ったやみは(これまでの経験上 液晶の端子付近はスポンジ登場率100%だったから)、ここにマイナスドライバーを突き立てて、テコの原理よろしく「ぐいっ」といきました。
ええ、行きましたとも。それはもう思い切りよく。で結果が上のとおりです。ガラスが割れたのです。

よく見たらこの白い何か、下の方にツメがあります。どうもスポンジじゃなくてわりと硬い素材で、しっかりLCDユニットの一部だったらしい。そこにむりやりテコをねじ込んだわけですからそりゃあ割れもします。
ガラスの割れが原因なんで、こうなるともう直せません(ちなみにこいつ、割れやすさは顕微鏡でつかうスライドガラスより上です)。

やったことある人は分かると思うけど、ガラスの割れ目から液晶分子が漏れるっぽい。一気に黒い染みが広がる様はある種壮観です(この染み、指で押すと動くんだよねー)。
見たことないひとは100円の電卓でも買って試してみると楽しいかもよ。パネル加熱するのもあわせておすすめ。

いや別に割れてても分解する分にはぜんぜん問題ないんだけどね。
ただ、ここまできれいにできてたのに ちょっと残念だなぁと。

あぁ悔しいったらっ!



そんなこんなで、白い何かが金属枠から外れました。
右上の方が白く光ってます。どう見てもバックライトです。




パネルユニットを解剖


とりあえず白い何かを外します。



白い何かの正体はミラーシートでした。
バックライトの背面にミラー置くと、光の利用効率が単純に増します。




白い枠のなかに、テープ付けされたミラーシートが入ってます。
そして枠側には ガラス割るまで気付かなかったツメが。



パネル側に戻ってきました。




これはきれい。
ミラーの下にはバックライトLEDとプリズムっぽい板があります。
この板が導光板と申すものでしょう。



さて、液晶ってのはきほん「透明か不透明か」を制御するデバイスです。だから光に透かして見ないと意味がありません。その透かすための光がバックライトで、ここでは白色LEDが使われてます(電卓なんかの反射型液晶だと、外光を中で反射させてバックライトがわりにしてます。省エネだけど真っ暗闇だと画面が見えない)。

とうぜんバックライトには「広い面積に均等な照度を与える」ことが求められます。そのために、LEDからの光はまず導光板に入って、板の中で反射していって(光ファイバみたいなかんじ)そうして全体に行き渡ります。これで写真みたいな「一辺からの光だけで、全体が均一に光る薄い板」ができるのです。

図入りで詳しく見たいひとはここ [ja.wikipedia.org]どうぞ。



と導光板の存在は想定の範囲内だったんだけど、パネルユニットに入ってたのはそれだけじゃなかったのです。




パネルユニット解剖図。
※導光板・拡散シート以外の名前は適当※




反射シート → 導光板 → 拡散シート →




→ 屈折シートV → H
二枚で縞々の方向が90度違います。
ついでに屈折の方向も90度違います。



さてさて、この屈折シートとは何者なりや。
中に入った光が屈折したみたいに見えるってんで やみが適当につけた名前です。単純ですね。




こんなふーに屈折します。我ながら分かりやすい写真だ。



屈折シート覗いてまわり見まわすとおもしろいです。視界が30度くらいずれるんで、なんか物掴もうとしても 手を伸ばした先にはなんもなかったりします。

これよく見てみたら、どうやら複屈折みたいな現象が起きてるみたいです。
複屈折の詳しいとこはWikipediaでも [ja.wikipedia.org]見てほしいのですが、簡単にいうと いちどに二つの方向に屈折が起きるせいで、通った光が二重に見える現象です。




左の光源を屈折シート一枚ごしに見ると、右みたいになる。
光が対称方向に屈折してて、光源が二つ見えてるって言いたいわけだが……
我ながら分かりにくい写真だ。



そうしてこうして、やっと最奥のバックライトの載ったシートまでたどり着くことができました。




この先はもう液晶パネルのガラス板です。



ひととおり液晶パネルの部品を分けたってところで、やることはひとつです。



パネル実験


パネルユニットにこれだけ色んなシートがあると、やっぱ一枚ずつの役割が知りたくなります。
シートの組み合わせを変えつつ、画面がどんなふうになるか見てみるよっ。




導光板だけ。
画面が暗くて裏が透ける。あとモアレが見える。




導光板+ミラーシート。
光の利用効率が上がって、とても明るくなる。




導光板を外す。
バックライトの光が行き渡らないせいで、上の方だけしか明るくならない。




導光板+拡散シート。
ちょっと明るくなった。




導光板+屈折シート。
明るくなったうえ、モアレかなり消えた。




モアレ [ja.wikipedia.org]ってのは干渉縞のことです。細かいパターンを二つ重ねるとよく妙な縞模様が見えるじゃん? あれがモアレ。
液晶画面はピクセル(≒画素)が細かくいっぱい並んでて、導光板は細かい溝が大量に切ってあって、これ二つ重ねるとモアレがでます。とうぜんそのままじゃ画面として使い物にならないから、がんばってモアレを消します。屈折シートはそのために入ってるみたいです。


ところで、デジカメの撮像素子CCDも細かい画素が並んだ構造なんで、これで液晶画面のピクセルを撮るとふつうにモアレが出ます。だから写真で縞模様が見えても実はあんま当てにならない。




導光板+拡散シート+屈折シート。
モアレが消えて(写真だと見えてるけど)、明るくなって、裏が透けなくなった。



つまり、きほん導光板と鏡で明るさを確保して、屈折シートと拡散シートでモアレを埋めるって構造ですな。



大いなる謎 そのに


Vに特徴的な機能として「ミラーディスプレイ」があります。
待ち受け状態から一操作で画面が鏡になる! というやつ。




こんなかんじで、ちょい暗いけどふつうの鏡になります。
面小っちゃくて使える機能じゃなかった……



使っていたころからメカニズムが気になってたのだけれど、ここまで分解してもまだそれがわからんのですよ。
とりあえずバックライトからミラーシートまでの間には答えがないらしい。




導光板とバックライトだけでもミラー機能は問題なく動作する。



そこでやみは気付きました。この液晶 妙に分厚いぞ、と。
まだ何か構造が残ってそうな香りです。
マイナスドライバーでリベンジです。
どうせもう割れてるから失敗してもダメージは少ない。ええい、ままよ!
ガラスの引っかかりにテコっぽく力をかけると、果たしてガラス板が二枚に別れました。




一枚に見えた液晶パネル、実は二枚でした。



で、右側の写真をよく見てほしいのです。
どっちの板も向う側が透けてるけど、二枚が重なったところは鏡になってます。
二枚とも偏光板載った液晶だから、直交して重なった部分はふつう真っ暗になるはず。

とすると、とすると、とすると。
これは答えを得たのでは……!

画素がない方のパネルをつぶさに観察。




よく見るとただのハーフミラーだった。



決まりです。マジックミラーと同じ原理で鏡を作っていますね。

マジックミラーってようは、ハーフミラーを明るい側から見ると完全な鏡に見えるってやつ。
ふだんはバックライトが明るいので透明ガラスっぽく見えて、ミラー化するときは「バックライトを切って」「二つの液晶を不透明に」する。するってと液晶の向う側はとても暗くなるので、マジックミラーみたく鏡ができることになるわけです。

※バックライトを切るだけじゃ、ミラーシートの反射もあったりで まだマジックミラーに十分なレベルまでは暗くできんようです。上の動画みると、バックライト切れてから鏡になるまでは微妙にタイムラグがあります。




パネル破壊


!!!この先は分解とは呼べません!!!
メイン液晶から偏光板を剥がしにかかりました。

~なんで液晶には偏光板が貼ってあるのか~

液晶ってのは、二枚のガラス板の間に狭い隙間をつくって、そこに入れた分子の向きを電圧かけて変えるっていうデバイスです。

でもよくよく考えてみて、分子の向きなんてものが映像として見えるなんてのはおかしな話です。じっさい、何もないガラス板に液晶分子を入れて電圧かけても、ぜんぜん見た目かわりません。透明なガラス板があるだけ。
じゃあどうするか。ガラス板を偏光板という物で挟みます。偏光板で挟むと光波の揺れる向きが明るさの違いとして見えます。で、電圧で分子の向きが変わると光波の揺れる向きも変わります。
というわけで、分子の向きが明るさになって見えるようになりましたとさ。あとは好きな場所に電圧をかけてけば好みの明るさの画素が表現できます。これが液晶の原理。


……また小さい文字でわかるようなわからんような説明です。



見えづらいけど、ガラス表面にはシール状の偏光板が貼ってある。




before / after
片面だけ、左下半分の偏光板を剥がしてみた。
LCDがただのガラス板に逆戻り。




割れ目が写真の役に立った!
下ガラスの偏光板はカラーフィルタの外に張っ付いてます。



というわけで、破壊行為の結果手に入れた偏光板シールが下。




二枚の偏光板は直交させて重ねると不透明(真っ暗)に。
くるくる回すとおもしろいんだぜ。


破壊してから言うのもあほくさいけど、コネクタを抜いた状態で透明だから、この液晶パネルはノーマリーホワイトというやつになります。TNパネルで確定です。



LCD部品総覧


LCDと周辺基盤の接続をみてみましょ。




青矢印はフラットケーブル接続、
黄矢印は位置関係ってか折り畳み。




ぜんぶ裏返し。



こんどはサブ画面側の液晶ユニットをヒラきます。メイン側とほとんど変わりません。違いは
  • ミラー用液晶がない

  • 導光板とバックライトシートがいっしょになってる

ぐらい。ちなみにメインパネル側で導光板とバックライトが別になってた理由はついに謎のままです。単純に物理的な制約かしら。




ミラーシート → バックライト・導光板
→ 拡散シート → 屈折シートV/H → TN液晶パネル




金属台座的なやつ。表にメインパネル 裏にサブパネルがはまる。
役割は「台座」でいいんだけど、かなり薄っぺらいせいで「的な」って付けたくなる。




メインパネル根元のフラットケーブル模様がやたらきれい!



分解の大筋はクリアです。
ごめんなVよ、機能維持したままここまでバラすのは無理でした……



謎のこたえは


かなり上の方でなんか画面が激しく切り替わるトリックくさい動画があったとおもいます。
そのこたえを探すため、プラ枠の先っぽのあたりを詳しく見てみます。動画がトリックじゃないとしたら、プラ枠先に何かがあるとしか考えられないのです。




とりあえず目につくのは受話用スピーカーなので、はがしてみましょう。




外枠まで取ってみたけど、別にふつうです。



あとなんか金具があります。はがしてみます。



!!
磁石でした。
大きさは上のスピーカーと同じくらい。



これかな。これがこたえなのかな。
でもメイン基板側の貝合になる場所に特別目を引くものはないなぁ。

と、これ以上の検証は無理でした。
なぜって、もう分解しきっちゃってるからさ!
反応して切り替わるはずのディスプレイは、もう破壊済みなのさっ!



電池に手を入れる


さて、「分解しないでください(≡ 分解してください)」なんてわざわざ書いてあるものを、まさかスルーできるわけがないのです。つまり、こういうことです。




外観。ここからスライスしてヒラくことにします。




こんなかんじ。




パッケージはやわいプラスチック。
その中に缶(まさにこの表現でぴったり)が入ってる。
端子は上の方の緑っぽいやつ。




電池缶だけ取り出してみる。
形なにげにかっこいい。




コネクタだけもぎ取ってみた。
黒いとこはまさしくブラックボックス。電池の安全回路が入ってる?
# 疲れてきて作業がどんどん適当に




コネクタもがれた缶はこんなふう。
真ん中の出っ張りが負極、残りの缶全体が正極。




スパークっ!


さいごの撮るのはなかなか苦労したんだぜ。



電源に手を入れる


せっかくの機会だし、周辺機器までもれなくしっかり分解します。




そとみ。実はWIN世代の充電器よりひとまわりでかい。
+も-も書かれてないピンってGND?




端末側のコネクタ。別に変わったことはなし。
でもただの電源してはピン数が多いような。
出力電圧なん種類があるんだろ。



で、どうしてかこの先の分解にやたらと苦戦することに。




アダプタ側をヒラきたい →
シールひっかいて隠しネジ見つけたっ! →
勢い込んで剥がした先にネジがなし →
とてもざんねん。



ビスじゃなければツメしかありません。
充電器全体をスライスするかんじで切れ目が入ってるから、まあ適当にマイナスドライバーをねじ込みます。
……
……
……ねじ込めませんでした。

10分近くがんばったのに どこからもドライバーが入らない。
しかたないから、いちばん弱そうなコンセント付近をターゲットに、割れと断線覚悟でむりやり力をかけてみました。
「これでダメだったら、ミニルーター+ドリルピットで破壊しよう」とひそかに決意してましたが、なんとかうまく行きました。




なんとか差し込めました。
ドライバー二本をタイヤレバー的に使ってオープン。



そうしてなんとか筐体オープンが成功。
でもいま中見ても、なんで開けるのにこんな手間取ったのか謎です。




苦難の道を乗り越え、いま対面。
スイッチングレギュレータってこんな簡単っぽい実装なんだ!
ってびっくりしたやみです。どおりで軽い。




基板が取れました。ようわからんけど、これ裏表で色が違う。
黄色い方も紙フェノール樹脂じゃない気がするけど……
# 電子回路の知識がほしいのう




AC入力のすぐ次にあるこいつはヒューズ。
ヒューズなのに中が見えないってよいのかしら?




ゲート、ドレイン、ソース。FETだ! それしかわからんw
なんでトランスっていっつもこんな接着剤に埋まってるんだろう…… 放熱?




抵抗とダイオード。それにコイルと大きめの電解コンデンサ。
いかにも電源回路ってかんじの見た目です。それしかわからんw




ツェナーダイオード! はじめて見たっ!
でもやっぱりそれしかわからんww



トランスだけ分けたいなーと思ってピン足を切ってみました。




失敗して基板全体がセパレートしました。





単離?されたトランス。中には二つコイルが入ってる、はず。
じゃあなんで五つ足? 一本は機械支持用?
わからんわー わからんわー。




わからんこともうひとつ。
PHC1って書いてある緑色の素子はなんなんだろうー。
端子はA/K/C/E(アノード/カソード/コレクタ/エミッタ????)。
# 四つ足素子はサイリスタしか知らない自分



グランドフィナーレ


幕です。さいごわからんだらけだったけど。

いやぁいつもながら超長い旅路でした。全五回構成とかでやるべきだったのかねぇ。γ本文だけで20KB超えてるしさw
しかしこれで安心して年を越せます。




どれがなんの部品かな?
ぜんぶわかったキミはすごい!




さいごに導光板を一枚。
大量の細かい溝が切ってあるせいで、回折格子みたく振る舞うっぽいです。

光に透かすと虹が見えてきれい。








製作・著作 :

――糸冬――

コメント

匿名 さんのコメント…
ひまじんやなぁ。


充電器に関しては、普通にACーDCの整流回路だろうから回路図はググればいくらでも出ると思うよ。


なんというかあまりに目的が無さ過ぎてわろた。長い割に考察がいまいちだ。素直な批評でごめんよ。

たとえばね、開閉で画面が切り替わるところとか。

どういう条件で画面が切り替わるのか(電圧か電流か)が分かればそれなりに解明できるんじゃないかね?

テスタがないと無理だけど。
やみ さんの投稿…
>長い割に考察がいまいちだ。
それ書きながらすごい思った! 分解やりつつ知識の限界を感じたよお。

回路図ぐぐるのはおもいつかんかった。でもいま見てみて理解できなかった;;

開閉んとこは磁石に反応するリレー的な素子が見つかればよかったんだけどなぁ。

>テスタがないと無理だけど。
テスタはあるぜ!
父親に抵抗ぶっ飛ばされておかしな値しか指さなくなってるけどww
匿名 さんのコメント…
>充電器に関しては、普通にACーDCの整流回路

スイッチング電源に何言ってんのかしら
この人。

開閉で画面が切り替わるのは本体側に
磁力でON/OFFするリードスイッチが
付いているから。

ついでに電源のPHC1てのはフォトカプラ。
赤外線LEDとフォトトランジスタを
ひとつのパッケージに納めて電気的に
絶縁出来る素子。
A-Kが赤外LED、C-Eがフォトトラ。