唐突に思いついて何かを分解・構造解析するのはもはや萌えごみの伝統ですが、今回ついにやみの魔手が食べものにまで及びます。食い物で遊ぶなと石を投げられそうなこの企画ですがご安心ください、使用したカップヌードルはその後スタッフが残らずおいしく頂きました。
具材の分別だけで半時間
何を隠そう、〝インスタントラーメンの父〟生誕百周年の記念企画!
……というのはもちろん嘘だけど、とにかく百周年でカップヌードルが1個100円で売られているのだ。
カップヌードルの先物とかあったら間違いなく全力でL叩き込んでるレベルの値引率だ。
当然大量に買い込んだわけだが、これだけあるんだから、いっこくらいは遊んでみてもいいじゃんね?というわけだ。
まな板の上のカップラーメンという絵のシュールさなど気にせず、まずはビニール包装を解こう。
普段なら爪を使って失敗するところだけど、今回は刃物があるので楽ちんだ。
そしてふたを開ける。真ん中で止めたりせず最後まで一気に開くのだ。こ、これは気持ちいい……!
おなじみV の中身が顔を出したら、まずは表面に載っている具材を取り出してしまおう。
ピンセットを使って分別する。小さな部品が多く思いの外面倒だ。
気付いたらふたを開けてから30分弱の時間が経過していた。
表面に散らばっていた具材の一覧。なんか卵多くないか?
スープ顆粒と千切れた麺の量は意外に少ない。
次はいよいよ、毎度おなじみの「極めて物理的なアプローチ」でもって本体の分解に入る。
乾燥麺をザクザク切断する感覚が楽しくて仕方ない
このあたりからようやくV の扱いがV らしくなってくる。V 冥利にも尽きるというものだろう。何を言っているのか自分でもよく分からなくなってくるけど。
……なんだろう。面白すぎるこの感覚。
引いて押すたび刃は確実に沈み込んでゆく。それだけなのだ。それだけのはずなのに、やたら楽しい。
たとえるなら、冬の朝に偶然見つけた霜柱を踏むのが理屈抜きで楽しくて仕方ないという、あの感覚によく似ている。ちなみにやみは20過ぎた今でも霜柱踏むのが大好きです。
裏側に回って同じように切断する。心なしかザクザクの歯ごたえが劣化した気がする。ざんねん。
狭いまな板の上では撮影場所を探すのにも苦労したけど、とにかくカップの中身を人体模型っぽく展開することができた。
カップの断面は工夫の跡の嵐
切ったカップの構造がおもしろそうなので、もっとよく観察してみる。
全体的に白飛びするので写真では分かりづらいが、どうも側面プレートと底面板は別々のパーツで、カップを作るときに組み合わせているように見える。側面にも層構造が見えるが、それぞれ材質が異なるのだろうか。ここはanti-V 戦略に従って「徹底的に分解」してみよう。
まず底部の分離を試みる。ピンセットを使って重なりを剥がすように引っ張ってみると……
たしかに分解前のカップを見ても、側面と底面は外からの手触りがまるで違う。この底面は紙製なのだ!
側面も剥がしてみよう。
切断面にカッターの刃を差し込んでみると、表面のラベルと中の発泡層がさらに別れた。
よく分からないのは外のラベルだ。ここもおそらくスチロールに違いはないのだけれど、どうも手触りというかきめ細かさが段違いなのだ。カップヌードルを持ったときの妙なさわり心地の良さはこれが理由だったのだろうか……
つぎはカール部分を観察してみる。
こうして見てはじめて気付いたのだが、このカールの厚さは一定ではなく、先に行くほど薄くなっているようだ。
カップの内張もさらに二層に別れるようだ。
上側は麺や汁に直接触れる層で、耐水性と耐熱性が必要な部分だ。これまでで一番薄く透明感があり、触ってみるとツルツルしている。プラスチックの一種だろう。
下は耐水層の外側で、写真では毛羽だって見えるが、厚紙が使われている(糊を染みこませるための層?)。分解前のV では、このさらに一層外を発泡スチロールが取り巻く。
そんなわけで、ここまでの解析結果を図にしてみた。
この軽さで必要十分強度を確保してる。……かっこいい!
どん兵衛とかきつねのカップは発泡スチロールonlyだったと思うけど、これは少なくても三種類の複合だ。カップヌードルは(どん兵衛に比べても)湯を入れたときもあんまり熱くならないしたわまないけど、それはこういう複雑構造のたまものだったのだ!
※耐水層の材質はわかんないけど、まあ食品用で耐熱耐水といったらPPじゃないかなーと。
カップから出した麺はちゃんと戻らない
ひとしきり感動したところで麺の解析に戻る。
中の麺は予想外にきれいだ。というのは、スープの顆粒が麺の中にはないのだ。麺の上に載っている分と、麺より下の底付近に溜まっている分しかない。底の方には千切れた麺が大量にある。
次はお湯を使って具材と麺を戻してみよう。
食べてみよう。
冗談ではない。本当に味が濃いのだ。300mlのお湯と麺にくまなく味をつけるだけのスープの味とはこれほどかと感心もするが、このままでは食べられない。ちょっと負けた気がするが仕方ない、残りの麺と具材も全て湯に入れてしまおう。
写真ではふつうのチキンラーメンみたいな見た目だけど、実はこの麺、生煮えだ。よく見ると透明に近い麺の塊が所々にできてきて、そいつらは全然固いままの麺を保っているのだ。
どんぶりという自由度の高すぎる環境が悪いのか、はたまたヌードルのカップが特殊に計算されて作られているのか、そこのところはわからないが(おそらくどちらも正しいのだろう)、とにかくこれだけは言える。カップから出したヌードル(略;アンカップヌードル)はお湯に入れても正しく戻らない。
それからもうひとつ、塊になっている麺の内部は、たとえお湯で柔らかくなっていたとしても、スープの味が染みていないのだ。もちろん実際のカップヌードルではそんなことは起こらないから、カップの中では対流などがうまく働くのだろう。スープ顆粒がカップの底に溜まっていたのも、麺全体に効率よく味をつけるための工夫なのかもしれない。
カップヌードルは小さなハイテク
麺と具だけでは食品として成立しない。工夫を凝らしたカップあってこそのヌードルである。麺の戻し、スープの回り、すべてにおいてこのカップが重要なのだ。
# 調べてみたらプロジェクトXでも開発話が取り上げられたらしいね。
具材の分別だけで半時間
何を隠そう、〝インスタントラーメンの父〟生誕百周年の記念企画!
……というのはもちろん嘘だけど、とにかく百周年でカップヌードルが1個100円で売られているのだ。
カップヌードルの先物とかあったら間違いなく全力でL叩き込んでるレベルの値引率だ。
当然大量に買い込んだわけだが、これだけあるんだから、いっこくらいは遊んでみてもいいじゃんね?というわけだ。
まな板の上のカップラーメンという絵のシュールさなど気にせず、まずはビニール包装を解こう。
普段なら爪を使って失敗するところだけど、今回は刃物があるので楽ちんだ。
そしてふたを開ける。真ん中で止めたりせず最後まで一気に開くのだ。こ、これは気持ちいい……!
おなじみV の中身が顔を出したら、まずは表面に載っている具材を取り出してしまおう。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiG98Qpi83tSUdwaxP_wkjQEdQseK8we_4CRUMpNXJGCHr6EIuLUif-rX2savuyWM_vKBuHvY8b9m4Pm9UhALpb4v-tAP8-rgGD61o2G1zFlCXJPy2TaWXri7Pl2CAUPOJqGh9H5-VQwjs/s400/P3095064_1.jpg)
気付いたらふたを開けてから30分弱の時間が経過していた。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgkBm2j3b90xhSMbUO46jFfNFmVkzAvaIW0K8fvSWc8PHL-FmmnfYP7o21_BioIAJsC2tA1rm728sjGfWb3jnKwZvXJxN7rw7H-848FwURJSl0XqEE-xD4hTP7aHd1a-mhwUAMErS2dMhg/s400/P3095063.jpg)
スープ顆粒と千切れた麺の量は意外に少ない。
次はいよいよ、毎度おなじみの「極めて物理的なアプローチ」でもって本体の分解に入る。
乾燥麺をザクザク切断する感覚が楽しくて仕方ない
このあたりからようやくV の扱いがV らしくなってくる。V 冥利にも尽きるというものだろう。何を言っているのか自分でもよく分からなくなってくるけど。
……なんだろう。面白すぎるこの感覚。
引いて押すたび刃は確実に沈み込んでゆく。それだけなのだ。それだけのはずなのに、やたら楽しい。
たとえるなら、冬の朝に偶然見つけた霜柱を踏むのが理屈抜きで楽しくて仕方ないという、あの感覚によく似ている。ちなみにやみは20過ぎた今でも霜柱踏むのが大好きです。
裏側に回って同じように切断する。心なしかザクザクの歯ごたえが劣化した気がする。ざんねん。
狭いまな板の上では撮影場所を探すのにも苦労したけど、とにかくカップの中身を人体模型っぽく展開することができた。
カップの断面は工夫の跡の嵐
切ったカップの構造がおもしろそうなので、もっとよく観察してみる。
全体的に白飛びするので写真では分かりづらいが、どうも側面プレートと底面板は別々のパーツで、カップを作るときに組み合わせているように見える。側面にも層構造が見えるが、それぞれ材質が異なるのだろうか。ここはanti-V 戦略に従って「徹底的に分解」してみよう。
まず底部の分離を試みる。ピンセットを使って重なりを剥がすように引っ張ってみると……
たしかに分解前のカップを見ても、側面と底面は外からの手触りがまるで違う。この底面は紙製なのだ!
側面も剥がしてみよう。
切断面にカッターの刃を差し込んでみると、表面のラベルと中の発泡層がさらに別れた。
よく分からないのは外のラベルだ。ここもおそらくスチロールに違いはないのだけれど、どうも手触りというかきめ細かさが段違いなのだ。カップヌードルを持ったときの妙なさわり心地の良さはこれが理由だったのだろうか……
つぎはカール部分を観察してみる。
こうして見てはじめて気付いたのだが、このカールの厚さは一定ではなく、先に行くほど薄くなっているようだ。
カップの内張もさらに二層に別れるようだ。
上側は麺や汁に直接触れる層で、耐水性と耐熱性が必要な部分だ。これまでで一番薄く透明感があり、触ってみるとツルツルしている。プラスチックの一種だろう。
下は耐水層の外側で、写真では毛羽だって見えるが、厚紙が使われている(糊を染みこませるための層?)。分解前のV では、このさらに一層外を発泡スチロールが取り巻く。
そんなわけで、ここまでの解析結果を図にしてみた。
- 未開封の状態では、耐水層とフタで密封が完成。
- 天地のフチは刃が立ちづらいぐらいの強度で、縦方向にはかなり強い。お湯を入れてフチを持ってもカップの歪みが少ない。
- 側面の強度は比較的低いけど、内側耐水層と外ラベル面が引っ張りに強いので、破れや座屈は起こらない。
- スチロールに比べて強度のある耐水層を採用しているので、食べてる最中間違って箸でつついても凹んだり穴が空いたりはしない。
この軽さで必要十分強度を確保してる。……かっこいい!
どん兵衛とかきつねのカップは発泡スチロールonlyだったと思うけど、これは少なくても三種類の複合だ。カップヌードルは(どん兵衛に比べても)湯を入れたときもあんまり熱くならないしたわまないけど、それはこういう複雑構造のたまものだったのだ!
※耐水層の材質はわかんないけど、まあ食品用で耐熱耐水といったらPPじゃないかなーと。
カップから出した麺はちゃんと戻らない
ひとしきり感動したところで麺の解析に戻る。
中の麺は予想外にきれいだ。というのは、スープの顆粒が麺の中にはないのだ。麺の上に載っている分と、麺より下の底付近に溜まっている分しかない。底の方には千切れた麺が大量にある。
次はお湯を使って具材と麺を戻してみよう。
食べてみよう。
- 卵。薄く醤油っぽい味つき。戻す前の方がサクサクしてて面白い。
- エビ。エビだ。戻す前の方がry
- 肉。変わる前の肉の方がおいしかった。醤油系で強めに味付け。
- ネギ。味がしない。ネギの香りだけ。戻すと香りが飛ぶ。
- 麺。戻す前のはベビースターラーメン。完全にこれでもかと言うほどまごう事なきベビースターラーメン。味も風味も食感もまさにこれこそが "This Is It" ベビースターラーメン。
- スープ顆粒。味濃ッ! 食えねえ!
冗談ではない。本当に味が濃いのだ。300mlのお湯と麺にくまなく味をつけるだけのスープの味とはこれほどかと感心もするが、このままでは食べられない。ちょっと負けた気がするが仕方ない、残りの麺と具材も全て湯に入れてしまおう。
写真ではふつうのチキンラーメンみたいな見た目だけど、実はこの麺、生煮えだ。よく見ると透明に近い麺の塊が所々にできてきて、そいつらは全然固いままの麺を保っているのだ。
どんぶりという自由度の高すぎる環境が悪いのか、はたまたヌードルのカップが特殊に計算されて作られているのか、そこのところはわからないが(おそらくどちらも正しいのだろう)、とにかくこれだけは言える。カップから出したヌードル(略;アンカップヌードル)はお湯に入れても正しく戻らない。
それからもうひとつ、塊になっている麺の内部は、たとえお湯で柔らかくなっていたとしても、スープの味が染みていないのだ。もちろん実際のカップヌードルではそんなことは起こらないから、カップの中では対流などがうまく働くのだろう。スープ顆粒がカップの底に溜まっていたのも、麺全体に効率よく味をつけるための工夫なのかもしれない。
カップヌードルは小さなハイテク
麺と具だけでは食品として成立しない。工夫を凝らしたカップあってこそのヌードルである。麺の戻し、スープの回り、すべてにおいてこのカップが重要なのだ。
# 調べてみたらプロジェクトXでも開発話が取り上げられたらしいね。
結論
- アンカップヌードル = ベビースターラーメン ≃ チキンラーメン。
- 分解しながら食べると、食べ終わってからの満足感が皆無。
- 乾麺をザクザクするのは楽しい。
- お湯パネェ。
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