さて、常時ONなタブレットの充放電制御を自動化した。
ref: この回 https://kirmav.blogspot.com/2022/10/blog-post.html
先の例では充放電の範囲を50~60%としたが、この設定は果たして電池の健康度にとっての最適値なのであろうか?
LCSの調査資料
ありがたいことに、文献を元にした調査資料が既に存在する。
この報告書を出している低炭素社会戦略センターというところは
第28代東大総長でもあった小宮山宏氏がセンター長をされているが、
この方は自宅を徹底的にエコ化して光熱費8割減を実現した人物らしい。
半端ない執念である。ちょっと信頼できそうな気がしてきた。
** 頑張って節電やってみた経験ある人ならわかると思うんですが、電気代高いのにビビって真面目に窓にプチプチ貼ったりエアコン我慢して着る寝袋で生活したりと涙ぐましい節電をしても1割も安くならないんですよね。8割減なんてエネ機器に投資しまくった上で自身と家族にも葉緑体取り込ませて光合成してるとしか思えない数字。
報告書を読み込む
簡潔にまとまっていて読みやすい報告書であることだし、身も蓋もないが、こんなブログ記事よりもPDFを見てもらった方が早い。
「まとめ」章だけ読めば結果はわかる。
さても。
報告書では電池劣化に影響を与えるパラメータとして以下を調査している:
- 充放電残量 SoC
- 1回あたり充放電量 DoD
- 電池温度
- 充電速度 Cレート
資料を解釈するに、電池を長持ちさせるため避けるべき運用条件という観点では以下のようになろう:
(電池のタイプによって若干異なるが、機器利用者の我々では電池タイプを判断できないので、すべてまとめて書く)
- 残量を50%から離れたレベルに充電ないし放電すること
- 特に60-70%、10-20%の範囲を通過するような充放電は劣化を早める
- 大きな充放電量を取ること
- 0-100%サイクルが最悪である
- 逆に小さすぎる充放電量を取ること
- 45-55%サイクルで劣化が早まったデータがある
- 高温環境に置くこと
- 実運用上では、機器本体の発熱により電池が高温になると劣化が早まる
- 充電しながらゲームするとマジで熱くなるが、アレは避けるべき
- 急速充電・急速放電すること
- 基本的には、充電時の電流が大きいほど劣化が速い
- さらに電流が大きいほど内部抵抗にかかった発熱がある
- ちなみにリチウムイオン二次電池の化学反応は、充電が吸熱過程、放電が発熱過程であるようだ
- つまり急速放電では化学反応の熱まで手伝ってアッチアチになる。避けろ
- [保管] 高温環境で保管すること
- [保管] 高い充電量のまま保管すること
- 100%で保管は言うに及ばず、70%でもかなり劣化は早い
で結局、充放電設定の最適解はどう考えるべき?
報告書の結論はわかりやすい。
SoC的にもDoD的にも、残量50%付近で維持するのがよい。
とはいえあまりに低いDoDでは劣化が早まったデータもあることから、
運用中のタブレットはDoD 20%(SoC 40-60%)設定とした。
さらに安物の低速充電器を使うことでCレート = 0.1程度とし、
機器本体の裏面通気性から放熱を確保する、といった対策をとった。
これで結果が出るには最短あと1年かかる。気長にやろう。
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