ULTRA0というゲームがなかなかおもしろかった。
おすすめです。1000円しない。5時間弱でサクッとクリアできるた時間にもやさしい作品。
https://store.steampowered.com/app/4019180/ULTRA0/
内容は、とにかくストーリーテリングが秀逸。SF的なディティールをあえて説明しすぎないことで逆に奥行きが出ている感じ。語りすぎないことでゲーム自体の分量も手頃に収まっていて、いいことづくめ。
あと、戦闘パートでキャラの立ち絵の髪がふわっふわなびくの、すき。
ただ、クリア後にもストーリーに一部謎が残った。これを解決できないか、考えを整理してみたい。
(以下ネタバレ)
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マホ編と真帆編の繋がりが切れているっぽいのはなぜ?
疑問といえばこれに尽きる。河合真帆という登場人物の辿ってきたタイムラインがいまいちわからないのだ。
ざっくり言って、マホ世界から真帆世界への進行は単なる時間経過ではない。- マホ編で死んだはずのキャラが真帆編では皆生きている。
- マホ編のラストはULTRA0を倒して100年以上経った世界だが、その後にプレイする真帆編ではULTRA0が健在。
- マホ世界の地理はN国・B国・E山脈などアルファベット表記。一方で真帆世界は日本国・東京。
- 真帆編のみキャラ名が漢字表記される。ただし……
- 登場人物同士は漢字名で呼び合うが、真帆とアキラのみ他者のことをカタカナ名で認識しカタカナ名で呼んでいる。
- アキラは真帆編でもカタカナ名のまま。アキラは真帆をマホと呼び、白銀をシロガネと呼ぶ。
- 真帆世界の開始時に真帆の主観では長い時間経過があった様子。
- マホは左目の下に泣きぼくろっぽいのがあるが、真帆の立ち絵からはそれが消えている(イベントシーンのみ。戦闘立ち絵には差異なし)。
- 同じに見えて実は別の肉体だよっていうメッセージだと取れる。
こんな感じで伏線っぽい描写が散りばめられてはいるが、結局回収されきらない感じで、確定的な解答は示されなかった。とりあえず思いつく可能性を挙げてみる。
「真帆編以前の4章は、すべて昏睡状態の真帆が見たシミュレーション世界だった」説
地理やカタカナ人名から、真帆編とそれ以外には世界そのものに明確な違いがある。これをもって「カタカナ世界はシミュレーション世界でした」と解釈する説。
- ただの夢世界でなくシミュレーション世界としたのは、この世界があまりにも現実の未来を言い当て過ぎており、単なる夢として処理するには無理があるから。
- シミュレーション世界には5つのストーリーがある。シロガネ編、アキラ編、レイナ編、子供マホ編、大人マホ編である。
- シロガネ編~子供マホ編までは、現実とシミュレーションの出来事はほぼ同じである。一方で大人マホ編はシミュレーションの構築した未来予測の世界である。
時系列で整理すると、以下の順番になる。
- 現実の出来事で「シロガネ編~子供マホ編」が起こる
- 核攻撃後、現実世界で真帆が昏睡に入る
- 昏睡中の真帆がVRで「シロガネ編~大人マホ編」を見る
- ここがゲームの1-4章
- 核攻撃までは現実の真帆の記憶をなぞり、以降は真に迫ったシミュレーションに切り替わる
- VR内の主観で100年以上(もしかして1000年とか、もっと)を経験
- 現実世界で真帆が昏睡から目覚める
- ここがゲームの5章
- エンディング
シミュレーションについて細かいこと
- シミュレーション世界を作ったのはヤマダで(後述)、それを昏睡中のマホに仕掛けたVRプログラムで見せていた。
- 昏睡開始から何年か経ったあとでシミュレーションが起動されたので、その時点で決定している人類の状況やNOAHシリーズの話なども盛り込んでいる。
- 昏睡からの目覚めのシーンや経過時間が現実と同じなのは、わざとそうなるようにVRを設計したから。
- つまり、ヤマダは真帆を「意図して正確に68年間だけ昏睡させ、VR体験が終わった68年後に予定通り起こした」という構造になる。
- シミュレーション世界そもそもの目的は、真帆による滅亡の回避。
- 天才であるヤマダが計算し尽くしたVR世界で、考えうる限り蓋然性の高い未来予測を見せる。
- VR内で、真帆にあらかじめ滅亡に至る失敗ルートを体験させ、失敗の原因が何だったのか、何が悪かったのかを考えさせる。
- いざ現実で目覚めたときは失敗ルートを辿らないように。
補足
- VR内では、ヤマダしか知らないはずの事実がマホに明かされていることから、この世界はヤマダが作ったシミュレーションだと判断できる。5章の真帆はその知識を使って戦いを有利に進める。
- ハーモニクスの存在やその機能、レイナがハーモニクスを使っていること。これらは、VR世界での経験がなければ真帆の立場では知りようがない事実。
- NOAH2が隠されていた場所はシミュレーション内でも現実と同じだったが、現実のレイナやハイバラすらその位置は知らなかった。ヤマダがVRを通じて真帆に伝えたと見るのが妥当。
- ヤマダからマホ宛に手紙があること。現実でこのことを知っていたのはヤマダとハイバラだけだった。
- VR内で、エリア81の地下施設だけ100年以上あとでも電源が生きていたのは、そのVR機器が最初に稼働した場所として特殊地点に設定されていたのかな。
- 核攻撃を伝えるニュース映像に登場していた、記憶喪失っぽいマホはなんなんでしょうね……
- 攻撃した側の作ったプロパガンダ用のフェイク映像としても説明はつく。
- メタ的には、力を使いすぎてエリア81来る前みたいに記憶喪失になったとか、一時的にゼロとマホの間で人格スイッチが起きていたとか、そういう意図の描写ですよってことだとより面白い。
- 最終戦でアキラはマホをカタカナで呼んでくれるのだが、このVR説だとそこのところをうまく説明できない。
「現実だったのは最初の4章の方で、真帆編は終わりのないコールドスリープに入ったマホの見る幸せな夢」説
| こっちが現実 |
「5章以前と以後で世界が違うのはわかった。あとはどっちが夢でどっちが現実かだよね?」に対する、救いのない方の説です。
- 現実で世界は本当に滅んだ。強化人間マホの身体は最低でも100年以上は経過しておりボロボロ。しかも(おそらく)ゼロを出産しており、それによっても身体が弱っている。
- 動かなくなった身体をゼロに永らえてもらいながらなんとか生きているが、ついに眠りにつく。真帆編は、その死ぬ寸前の走馬灯に見る夢。
- 真帆編でうまく立ち回れたのは、そういう、全てがうまくいく幸せな夢だから。
- ゼロの「次にマホが目覚める頃には全部解決してる。私が全部何とかする」発言は、幸せな夢を見せてあげるよ程度の意味。
- 真帆編で色々知っていて先回りできたのは、現実で失敗してすべて経験済みだから。
- 真帆編に全体的に漂う都合の良さ、それ自体が夢であることの証拠。
- なろう系主人公みたいにあらゆるあれこれがトントン拍子で進む。
- 知るはずのないことを色々知っている真帆のくせに、都合のいいところだけは忘れていて、会話に大きな齟齬が出ない。
- 灰原と和解できたのも、単にそういう都合のいい夢だからに他ならない。
- NOAH3の住民と簡単に打ち解けられたのも、もちろん同じ理由。
- 人の心がわからない系人間ヤマダが、真帆に丁寧な謝罪の手紙をしたためるなんて、そんなの夢の世界でなきゃなんなんだよ!
- 手紙を読む真帆は「私に無理やり怪獣を食べさせた事について」と言っているが、実際は無理やりではない(騙し討ちのような形ではあったが、ヤマダとしてはマホが喜ぶと思って用意していた)。
- つまり、手紙の内容が、真帆側の一方的な記憶に影響されて、これも都合よく書き換わっているように見える。
- 真帆編で目覚めたとき大きな時間経過を覚えたのは、実際に何百年も経験しているから。
- 真帆編の視界がモノクロなのは、マホ編の最後で視覚素子が故障していたことの影響。
| エミュレート |
強烈なキャラ個性に隠れていて気づきづらいが、恐らく作者の本当の癖ポイントは「エグくて救われないストーリー展開」の方にあるのではという気がしている。
だからゲーム全体の構造をバッドエンド必至にするというのはある種頷ける話じゃね? という雑な類推が働いた。ではどうして真帆編を作ったかというと、ハッピーエンドを求めるプレーヤー向けのサービスである。ひえー。
「真帆編の前に世界が再構築されている」系の説
マホ編の最後に目を閉じるところで世界は一度終わり、真帆編は別世界として再スタートしているんだー系の説。内容でさらに細分化できて
- 時系列が一直線だったとするなら「レイディアントシルバーガン」説
- そうでないなら死に戻り、ないしループ説
という感じ。
再構築・ループ説
滅亡したあと時間を戻って運命を変えた、みたいなありがちのやつ。
ULTRA0の宿主は死に戻り能力を得るのだ! というある種ご都合主義的な理由付けになる。アッこの問題オール・ユー・ニード・イズ・キルで見たやつだ!
当然これを採択できるだけの根拠となる伏線はないので、説得力はない。地名や人名が変わっていた理由も説明がつかない。
再構築・レイディアントシルバーガン説
- 超長期コールドスリープに入った真帆のため、ゼロがめちゃ頑張る。
- 人類以外の生態系は割と残ってそうなので、たぶん1000万~1億年くらいかけて文明を再興させる。
- その上で、滅亡世界と全く同じ人物が生まれ、さらに全員が滅亡世界と同じ出来事を経験するように運命操作までやる。
- 運命操作を一番やってそうなキャラといえばヤマダですね。つまり真帆編のヤマダは実はゼロです(?)
- 国名違いとかカタカナ⇔漢字みたいな細かい違いだけはなぜか残った。詰めが甘い。
- ちょうど記憶がつながるタイミングで真帆が起きるようにプログラムし、ゼロ自身は朽ち果てたか、再度ULTRA0役を演じるため怪獣化。
この説を採択するとうまく説明できることも多い
- 真帆が目覚めた直後ものすごく長い時間経過を覚えたとする描写があること。
- 実際にまじで気の遠くなるくらいの年月が経過しているので当然。
- ゼロの「次にマホが目覚める頃には全部解決してる。私が全部何とかする」発言の意図は、こちらの説明の方がしっくりくる。
- マホ編のラストでゼロは「ではまた、次の目覚めに」と言っており、マホだけは前の世界の記憶を持ち越してリセットしているという解釈が自然にできる作り。
- 最終戦でアキラだけはマホをカタカナで呼んでくれることについて、この説における解釈は「アキラも旧カタカナ世界で一人孤独に生き残り、悠久のコールドスリープを続けた。そしてなんかうまいこと噛み合って漢字世界でマホを助ける絶好のタイミングで復活した」である。なにそれエモ。
- 真帆編の視界が当初モノクロなのは、マホ編の最後で視覚素子が故障していたことの影響。
- 最後に色が戻るのは、いいタイミングで故障が直ったのか、それとも「ようやくカタカナ世界の記憶を持つ他者に再会できて、しかもそれが想い人で、灰色だった世界に色が戻った」というロマン解釈をすべきなのか。
- そういえば、アキラ編の幽霊騒ぎのとき幽霊の見た目がシロガネっぽいなと思ったけど、あれ実はマホを見守るゼロだったり?
| 最初の会話が最後の会話に相似している点を 運命操作の影響でもつれている、と解釈できる……? |
シナリオの書き方からはシルバーガン説が一番示唆されていそうなんだけど、全般的に飛躍が大きいのと、運命操作までやる困難さに相当の無理があるので、ハードSF好きとしてはちょっと採用しがたい気持ちもあったり。
大人マホがそのまま大人真帆になったのだとすると、存在したはずの子供真帆はどうなったんだろうとかも、解決してない問題ではあるんだよなあ。世界再構築後に意識だけをDメールみたく転送したのかね。
マホ編のゼロはまあ、マホに自分を産ませて分離を果たしたってことだと思うけど、2人目以降の人間はどうやって作ったんだろうね。どこかに落ちていた髪の毛を元にしたクローンとかかな。
【追記】『再侵略』説
※この記事を公開して1日経ってから思い至ったので追記。メタ読み的にはわりとありそう。
シルバーガン説の亜種。この説をとると、マホ編の最後にあるゼロとの会話をすべて説明できる。端的に言うと「マホ世界の地球と、真帆世界の地球は、実は別の星」という話。
- ゼロとの最後の会話
- マホ「ゼロ、仲間を探しなさい。あなた一人に、この宇宙は広すぎるわ。心の通じ合う仲間を探しなさい」
- ゼロ「心配すんなって。次にマホが目覚める頃には全部解決してる。私が全部何とかする」
- マホはゼロに「地球を出て心の通じ合う誰かを探せ」と言っている。ゼロはそれを確実に実行したのでは?
- ゼロはマホの怪獣部分だけを分離した存在で、つまりは純粋なULTRA0そのものだ。宇宙に出ていくことも可能だろう。そして怪獣として別の星を侵略することも。
- この説に根拠を与えるのは、最終戦のさなかで唐突に明かされる「怪獣とは星間侵略兵器である」の一節だ。
- 怪獣を送り出したのはカタカナ地球、怪獣に侵略されたのが漢字地球。最初の怪獣たるゼロが生まれたのはカタカナ地球で、その生みの親はマホである。
- これはつまり、怪獣の創造主はカタカナ地球文明であると言える。
- 「怪獣は、侵略した星で創造主の来訪を待つ。創造主の文明が既に滅んでいることも知らずに……」
- 当然、滅んでいる文明 = カタカナ地球 となる。
- ゼロはマホの言いつけを守って宇宙を渡り、マホ一人のために故郷とよく似た星の漢字地球を侵略し、マホと心の通じ合う相手を探し出してきて再会させた。
- アキラ「ULTRAの0号が現れるのは地球が滅んだ後だ」という発言の違和感もこれで解消される。確かにゼロの誕生を含むすべての重要な出来事は、カタカナ地球の滅亡後に起きている。
- もしかしたら、漢字地球の本当の主は怪獣たちの方で、そこにゼロの作り出した人類が侵略してきた構図とかなのかもしれない。
つまりこの物語は、主人公であるゼロとマホという二体の怪獣(ULTRA0たち)が、悠久の侵略の旅を経てついに仲間を見つけるというものだった。ULTRA0ってタイトルはそういう意味なんだね(ホンマか!?)
| ゼロの目元にはマホと同じ位置にほくろがある。 マホ→真帆で消えたほくろは、ゼロが形見に持っていった ……と解釈するとなんか美しい。 |
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