好きな車窓の話をする。具体的には北陸道の親不知海岸高架橋の話。
親不知海岸高架橋 is 何
親不知海岸高架橋とは、カッケぇ高速道路である。
新潟と富山の県境付近にある |
3D表示で見るとこの通り、高速道路が海の上を張り出して走っている。すごい。私はSF未来チューブ道路の亜種だと思っている。
なぜこうなっているのかというと単純に建設のための地面がないから。断崖絶壁から即座に海が開けており、海岸と呼べる部分の幅は20mくらいしかないのだ。
その狭い用地に国道8号線、えちごトキめき鉄道(旧北陸本線)、北陸自動車道がひしめいているので、最後に作られた高速道路はもはや海の上を走るしかなかった。ちなみに北陸新幹線は諦めて山の中をトンネルで貫いている。
Wikipedia 親不知 より Ignis - 投稿者自身による著作物 |
北陸道随一の難所
「親不知」の名称の由来は、幾つかの説がある。一説では、断崖と波が険しいため、親は子を、子は親を省みることができない程に険しい道であることから、この名が付いたとされている。
古く北陸道を通行する旅人は、この断崖と海の間のわずかな隙間を波が引いたタイミングを見計らって進んでいったらしい。
当時の北陸道イコールいまの国道8号…… ではなく、海岸(というか波打ち際の僅かな隙間)が北陸道だった。タイミングミスると普通に海にさらわれる。超怖Y。合唱曲『親知らず子知らず』はそうして波にさらわれた母子の話。
親不知海岸高架橋の塩害対策最前線 ~北陸最大の交通難所を守る~ より |
在来線の親不知駅、高速道路の親不知インターがあるので、地名としては親不知の名前が有名と思われる。
しかし北陸自動車道には付近に子不知トンネル (~4550m) があり、これが地味に北陸自動車道で最長のトンネルなので、運転すると子不知のほうが強く印象に残る。親不知トンネルもあるけれど長さは半分くらいしかない。あと開通もここが最後だったなど、難所エピソードが豊富だ。
景色の素晴らしさ
この親不知、個人的に気持ち良い高速道路エリアBest1である。
「単純に景色が素晴らしい」
トンネルトンネルで山の中を走り続けてると思っていたら突然眼の前に海が開ける。日本海側の特性か風もわりと涼しい。
そして道がいい感じにカーブしているので遠くの高架橋までずっとまっすぐに見通せる(動画参照)。かつての難所もいまや景勝地といういい時代。
「トンネルの外を走れるという開放感」
このトンネル区間はけっこう圧迫感があって息が詰まるので、景色が開けて3キロ以上に渡って太陽を拝めるこの海岸高架橋はさながら砂漠のオアシスのおもむきがある。
あと昔はトンネル内ぜんぶ対面通行だったので、久しぶりに2車線になるこの区間は神だった。でも車線増えた瞬間から追い越し競争が発生するので事故は起きやすかったと思う。トンネルのストレスをアクセルに叩きつけて130キロで追い越すような車がいっぱいいた。
鉄道側の景色もよい
鉄道は低い位置を通っている。そのおかげで国道と高速道路が両方見通せる。
こう見ると、やはりトンネルとトンネルの狭い区間になんとか駅を押し込めた格好だ。風が強いときはトンネルを抜けた瞬間から日本海の荒波が崖に叩きつける飛沫が見えたりする。高速の未来感と対象的にこちらは歴史を感じる。
空撮映像を見ると、道路と比べて鉄道は地上に露出している距離がわずかであることがわかる。つまり鉄道はトンネルがより長い。
これにはいくつかの要因があろうが、鉄道はそもそも坂に弱い乗り物なので平坦に近い線形にしかできないこと、国道8号線のように山肌を等高線のようにくねりながら進むのは鉄道にとっては急カーブすぎること、利用者のため駅は地上に作らなければならないこと、あたりがたぶん主要因になる。
その結果として鉄道は道路より低い位置を這うように敷かれることになり、トンネル区間が長くなった。なので先述したように波しぶきが大迫力で見えたりする。
北陸道を行くことがあったら親不知をよろしく
連続トンネル区間は単調なようでいてこうした細かな楽しみも多い。北陸道はなかなか走りやすく渋滞も少ない、旅っぽさを堪能できる高速道路だ。おすすめです。
↑MSFSで見に行ってみたら車がボートみたいに海を走っててすげえってなりました。
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