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ポケモン Kids TV の話

子供向け動画というジャンルは、Youtubeでもそれなりの大型カテゴリとなっている。

特徴として、子供は同じものを繰り返し見るので、再生数がものすごいことになる(子供が自力でタブレットを操作して無限に見続ける的な家もあると思う)。

例えば2-3歳あたりに激烈に刺さるD Billionsの動画には24億再生というとんでもないものがある。

大人が見るようなコンテンツと違い、動画全編にわたって視聴数グラフがほぼ平坦なのも面白い特徴だ。子供は最初から最後まで飛ばさずに全部見るのだ。


さて、「ポケモン Kids TV」はYoutubeチャンネルである

日本版海外版

これがポケモン好きの大人たちの間でどのくらい知られているのかは不明だが、登録者数はメイン公式チャンネルの2割ほどで、それほど多くはない。

しかし任天堂公式らしく優しい世界を良質なコンテンツで見せており、子供に安心して見せることができるチャンネルである。


今回は、これのコンテンツがたいへん多岐にわたっており面白いのでいくつか紹介したい。


ストレートな教育的コンテンツ

◇数字とか色を教える的なやつ

定番、かと思いきやそこまで数はない。


◇日本語と英語の童謡

チャンネル初期からあったシリーズ。最近あまり新作は来ない。

日本語版チャンネル内でも同じ歌で日本語版と英語版があって、よく双方関連動画に上がってくる。




◇子供向けドリルみたいなやつ:クイズ形式風味

何度も見る過程で、子供は答えを暗記して親に教えてくれる。そのついでに登場ポケモンの名前もガンガン覚える。すごい刷り込み効果。


◇しつけ・生活系

あまり数はない。この方向性ではEテレやしまじろうという強力なライバルが多数棲息しているためだろうか。



ちょっとお楽しみ風味なコンテンツ

◇ハロウィンやクリスマスなどイベント系

着ぐるみがダンスする実写動画がメイン。撮影にはけっこう手間がかかってそう。

今年のハロウィンでは新作投稿があったのでクリスマスにも新作動画くるかも。




◇モンスターボールが転がるやつ

いないいないばあのアレをポケモナイズしたやつ。○○地方ごとにシリーズがいっぱいある。

これを見せると子供は覚えたポケモンの名前をめちゃ得意になって叫んでくれる。


◇Flashアニメみたいなシリーズ

テイストは上のモンスターボールのに近い。




◇歯磨きゲーム動画

この中では異色で、ポケモン歯磨きゲームアプリのPVである。

毎日の歯磨き生活に導入することで、子供は食事のたびに歯磨きをし(て新しいポケモンを捕まえ)たがるようになる。

上記のPVはタイ語、インドネシア語、ヒンディー語版など多言語展開著しい。

アプリの出来はなかなかによく、メインの歯磨きゲーム、サブゲームのスタンプ遊び、ご褒美の図鑑や帽子といったコレクション要素……、とよくバランスが練られている。

最近アップデートが入り、初代に加え金銀までのポケモンが捕まえられるようになった。1日1ポケモンずつ捕まえるなら1年くらいは保ちそう。




◇ポケモンカタカナ

ノリノリの歌にあわせてカタカナ50音が登場する。

しかしこの動画で子供はカタカナではなくポケモンを覚えることになろう。

似たシリーズでポケライムというものもあるが、こちらは教育要素ゼロである。流してるだけでイーブイ進化系をまるまる暗記する。


◇体験探検ピカチュウ部 / PikaTube

ピカチュウがお仕事体験するよ的なやつ。社会科見学。ナレーターはまさかの子安武人。

新作も定期的に上がっているのだが、1本1本に制作の手間はだいぶかかっていると思われる。

大人が見ても知らないことがけっこう出てきて面白い、ピタゴラスイッチのような学びあるコンテンツ。

当然ながら受け入れする職場側は普通に仕事している一般の人。演技とかが下手なので棒読みになり、それが適度なゆるさになっている。

この↓鉄道回なんかはトップクラスの台本棒読みになっていて微笑ましい。



ポケモンの世界観広いわぁ…… ってなるやつ

◇(たぶん)ほかと繋がりのないアニメ

繋がりないよね? どれもなかなか良い世界観を出している。

↓これなんかは古いディズニーやトムジェリのパロディ。

↓これなんかは親にむしろ刺さる内容。子供向けと油断してると不意打ちで感動させられちゃう。




◇ポケモン絵本

絵柄が作品ごとに違ったりと、ただのアニメじゃない本物の絵本に寄せた作りになっている。




◇ホラーテイスト

微ホラー。ゴーストポケモンが一気に主役に躍り出る。

絵を見てわかるように、対象年齢がちょっと高め・小学生くらいで調整されている。



◇新作ゲーム連動

ゲームのPVみたいな位置づけのやつ。

なぜかアルセウスのはない。ゲームそのものの対象年齢が高いからだろうか?




◇着ぐるみがなにやらするやつ

企画はいろいろで、体操したり、ダンスしたり、相撲取りと勝負したり、なにやら。

↓イーブイがいっぱいでて踊ってるだけで子供は大喜び


◇パペモン

ゆるい人形劇。

「大人向けにおすすめをひとつ選べ」と言われたら迷いなくパペモンである。

たまにブラックな笑いが入るハッチポッチ感がよい。




◇自治体連動

もはやCSR。いまやアンパンマン以上に全国各地で目にするポケモンコラボの動画。





ポケモン Kids TVは育児動画バリエーションの地平だ

単に子供向け動画と言ってもこれだけの多様性があるのは面白い。またストレートな教育コンテンツはそこまで多くないという点にYoutube向けらしい選定を感じさせる。

「親の手を離せないとき、親に代わって子供を飽きさせないこと」がこれらの動画に求められている役割! という割り切りを思わせる。


もう一つ面白いのはポケモンの扱いの多様さで、「子供と対等のパートナー」「お世話をしてあげる弟妹」「助けてくれるヒーロー」「自由に暮らしている動物」と幅が広い。ポケモンだけで社会形成してコミュニティを持つ設定もあれば、人間社会に付属するペットのような位置づけのものもある。

子供を見ていると、こういった動画をそのままおままごと遊びの手本にしていることがよくある。様々な手本パターンを映像化することは、色々な遊び方を子供に教える効果があるように思える(お世話遊びが好きな子供は「自分より低年齢のポケモン」という世界観で遊びを作れるし、アクション展開が好きな子供はぬいぐるみ同士でバトルを再現できる)。

一見してリアリティラインはぶれているようにも思えるが、ポケモンが常に子供の味方である点だけは必ず守られているなど、一定のレギュレーションも感じさせる。とにかくポケモンに触れる子供に不安を覚えさせない点は徹底しているように思える。


総括して、ポケモン Kids TVは子供に好かれる以上に「母親から、子供に与えてよいと思ってもらえるコンテンツ」作りを続けてきた任天堂らしい作品集である。

そうして幼児はいつのまにか親よりポケモンに詳しくなり、小学生に上がるころには新たなファン層として次の需要の下支えをする。

任天堂はファンの世代交代とか新陳代謝のことをめっちゃ研究してるんだろうなって思わせるチャンネルだった。

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