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Ploopy Thumb トラックボールのエアブラシ塗装をやった (Ploopy Thumb Paintjob)

以前入手したPloopy Thumb トラックボールをエアブラシ塗装した。


なんか雅になった





途中いろいろあって完成までに数ヶ月の期間を費やした労作である。せっかくだから作業記録を書くことにした。


塗装前の状態

新品時のPloopyは以下のようであった(→ そのときの様子


写真では悪くない見た目なのだが、これの実物は3Dプリント品のため積層痕という細かい溝があり、そこに手垢が入り込んで不均一に黒ずむ。結果半年ほど使用しただけにも関わらずだいぶ汚らしい見た目になってしまった。

さて、これの本体色グレーはそこまで面白い色というわけでもない。すると数ヶ月おきに溝の黒ずみを掃除して回るのはどうしても不毛の気持ちを拭えない。

なので、いっそ全体を表面処理したうえでしっかり塗装してしまおうと考えたのであった。


前準備

電子部品を含む完成品の状態では塗装できないので、まず分解して外装だけを取り外す。そのあと脱脂のため石鹸で洗う(手の脂が残っていると塗料が載らない)。

洗ったことで手垢の黒ずみは除去できたようだ。


次に、支持ベアリングに塗料が付着すると機能が死ぬのでマスキングしておく。



マスクされた部分には塗膜が載らず、完成後の見た目では段差になってあらわれる。この段差は見た目が悪いので、ボールを嵌めてみてマスキングテープが完全に隠れるよううまく配置する。



ボール受けの縁ギリギリまでテープが来るので位置調整がシビアだった。千切ったテープをピンセットで載せるなどして貼り付けた。


下地処理して積層痕を消す

Ploopyは3Dプリンタ製なので積層痕というギザギザした模様が残っている。これはこれで味があるものの、塗装をする上では邪魔でしかないので可能な限り消す。

参考にした動画 → https://www.youtube.com/watch?v=p3Erg0mfNEw


使う道具だが、詳しい人におすすめを聞いたところ溶きパテというものを教えてもらったのでそれを買った。
→ Mr.サーフェイサー 500 (ビンタイプ) SF285



これを面相筆でボテボテと厚塗りして凸凹の穴を埋めていく。

  • パテなので乾燥すると固まってプラスチックのようになる
  • 色を塗るというよりは「穴を埋めて固める」
  • Mr.サーフェイサーには500、1000、1500といったバリエーションがある
    • 紙やすりの番手と同じで数字が大きいほど粒子が細かい
    • 凹凸を埋める目的なら小さい番手(粒子が大きい)を使うのがよい
  • 今回は大雑把にミリサイズ以下の穴を埋める目的で溶きパテを使った
    • より大きな穴の場合は練りパテとかを使うのがよいらしい
  • 厚塗り後は表面が乾燥していても内部はゆるゆるだったりするので十分時間を置く


下が処理前の状態。積層痕がもろに出ている。



1回塗りしたところ。まだデコボコしている。



パテが乾いたらスポンジヤスリで磨く。荒い番手で雑にゴシゴシ。
→ 3Mスポンジ サンドペーパー



元の積層痕と直角方向に磨くのがよさそう。目地方向に磨くと削れすぎ、埋めたはずの溝が復活してくる場合があったため。

クリックボタン部品とかは力を入れて磨くとグニっと曲がって折れたりする(した)。Ploopyの構造上ここは大変脆弱なので、気をつけていてもやるときはやる。

折れたものは仕方がないのでエポキシで補修しながら進めた。


もっと積層痕を消す

ある程度削ったら水洗いし削り粉を落とす(ちなみにマスキングテープは水洗いにも楽勝で耐える)。そして埋めきれなかった凹凸を探して溶きパテを塗るのを繰り返す。



パテ塗り用の筆は油断するとどんどん固まってダメになる。適宜拭き取りながら使うが、ダメになった場合は潔く捨てて次の筆をおろすようにしていた。

こんなこともあろうかとAmazonの50本セット面相筆を買っておいたので助かった。安い。
→ Rosi home 油絵 学


さらに表面処理してツルツル面を作る

塗る⇔削る を3回くらいループしたところ。


だいぶ表面の粗さが緩和されてきている。ついでにボール周りのシャープなエッジが丸くなったり、ロゴが削れて目立たなくなったりした。



これでも近づいて見ると凹凸がだいぶ残っている。

表面の粗さはおそらく塗装の最終的な仕上がりに直結するので、可能な限りツルツルを目指すべきだ。



合計10回くらい塗っては削りを繰り返して、指で触ってもデコボコがわからないくらいになったのが上の写真。

途中から全体に厚塗りはせず、細かい凹に沿わせるようピンポイントで少量のパテを塗り込む方式に切り替えた。



一番細かいヤスリで磨いて、全体にツルツルの表面を作っていく。

あくまで指で触ったときのデコボコのなさが大事。見た目に関しては多少縞々でも問題はない。

というのは、パテと基材の高さが一致するようにヤスリがけした結果、2つの材どちらも表面に顔を出すということはありえる。その場合見た目は縞々になるが、デコボコは綺麗に消えているはずだからだ。


塗装の下地を塗る

ここから先はプラモデルの塗装と同じ流れでいけるっぽい。

またしても未体験ゾーンなので詳しい人に聞いたところ、プラの上に直接塗料を吹いてもうまく定着しなかったりするのでサーフェイサー(サフ、プライマー)というものを先に塗るんだよと教えてもらえた。

→ GSIクレオス Mr.フィニッシングサーフェイサー 1500 ブラック スプレー



こうして塗装クリップに固定して


べったり


パテとPLAの2種類の材があり見た目が良くないので隠蔽するという役割もあるという。なるほどこのあとの塗料と比べてもサフの隠蔽力は格段に高いようだ。


生乾き


下の写真では乾いたあとで積層痕がまた見えてきている。ここは少し削ったあと塗り直したりした。




下地のシルバーを塗る

塗料は減法混色が基本になるので、黒の上に直接色を載せると暗くなる。そこで今回は隠蔽力の強いシルバーを使ってサフの黒を隠しつつ下地をつくることにした。

→ GX214 Mr.メタリックカラーGX アイスシルバー
→ T106 Mr.カラーレベリングうすめ液

塗料薄め液のことをシンナーと呼ぶと知らなかったので「不良のシンナー遊びは〝薄め液遊び〟だったのか!」という驚きがあった。ちなみに意味はそのまま薄くするもの (thin + -er) 。



そして缶スプレーにはほしい色がなかったので、今回初めてエアブラシ塗装をやってみることにした。

やってみた感想だが、缶スプレーと比べて10倍くらいの作業難易度がある。あらゆるコンポーネントがすべてアナログだし、ノズルが詰まって失敗みたいな罠も多い。しかしうまく出来たときの塗膜の美しさは何より素晴らしい。

→ Fascinated 充電式エアブラシ


本体はAmazonで一番上に出てきたやつをとりあえずポチっただけ。何しろ全く知見がない。

後で知ったのだが、ちゃんとしたエアブラシはエアコンプレッサーとハンドピースが別になっており、サイズや動作音を考えるとなかなか導入が厳しいものだった。その点この充電式はだいぶ手軽なのでよい。



塗っていくと結構しっかりガンメタル色になる。



使い方もよくわからんので「エアブラシ 初心者」とかで出てきた動画をいくつか見てわかった気になった。あとは失敗しながら覚える感じ。


色を上塗りする

この当時、イメージしていた完成品の色は以下のような感じ。Photoshop上でシミュレートして方針を決めていた。



イメージを元に塗料を買う。下地のシルバーを透過して反射してほしいのでクリアカラーのシリーズがよさそうと判断。

→ GX122 Mr.クリアカラーGX ピーコックグリーン
→ GX108 Mr.クリアカラーGX クリアバイオレット



実際に塗ってみると途中まではとてもよかった。この青緑きれいだ。だが紫まで塗ってみると…… 



ジャーン! これは毒ナス! エグい。

塗装色を決めるときの参考にしたサイトがあったのだが、そこの写真と見比べてもぜんぜん納得のいかない仕上がり。

→ https://pm-paint.com/paint-comparison/creos/mr-color/gx-122-silver/
→ https://pm-paint.com/paint-comparison/creos/mr-color/gx108-silver/

こんなにもアンマッチになるとは思っていなかった。とにかく色変更を決意。


色に迷走する

クリアバイオレットがダメすぎたので、とりあえずシルバーを上塗りして潰してみる(シルバーはアルミの粉が入っているので隠蔽力が強く、下の色を潰すことができる)。


結果、400系つばさになった


悪くはないが好みでもない。

次は、ピーコックグリーンがきれいだったので、全部を一色で塗るとどうなるか試してみた。


結果、おもちゃみたいになった


綺麗だけど違う。おれはツートンがやっぱり好きなんじゃーと理解した。

そこでいろいろ面倒になっていっそ全部やり直すことにした。シンナーを付けたティッシュで全部の塗料を溶かして落とした。



ここまでの履歴が地層のように出土している。かっこいい。




テカテカスプーンを量産する

やはりツートンを作りたいんじゃ! ということで目指すゴールを見直した結果、新しい塗装シミュレーションは以下のようになった。



塗料はなんか気づくと勝手に増えている。たぶん繁殖期なんだと思う。

→ GX107 Mr.クリアカラーGX クリアパープル
→ GX217 Mr.メタリックカラーGX ラフゴールド


そして他人の写真ではイメージ精度に限界があると学んだので、自分でコンビニスプーンに色々な塗料を吹き付けてサンプルを作りまくることにした。コンビニスプーンもなんか気づくと増えている物体であるから、同様に勝手に増える塗料と対消滅させるにはもってこいという感じだ。


複数の下地色チェック


白下地と黒下地でのシルバーの見え方違い
斜めで見たときに下地色の影響が現れるの、面白い


黒下地>シルバー>パープルと
白下地>シルバー>パープル


シルバーとゴールドの下地にパープルを塗っていく


赤銅色がほしい時はゴールド>パープルよさそう


バイオレット(上段)とパープル(下段)の色比較
パープルの方が彩度というか色純度が高そう


Xperia1の色を目指していたのでそれとの比較
どれも単体では目的の色を再現できなさそうだ


パープルにほんの少しピーコックグリーンを混ぜると
きれいな群青が出ることを発見した


混色率を変えながら何パターンか試し塗りをする。このときは毎回エアブラシを洗うのが面倒で筆で直接ちょんちょん着けている。

最終的にパープル9:ピーコックグリーン1ぐらいの混色率に落ち着いた。保管用のスペアボトルほか便利グッズも購入。
→ SB220 Mr.スペアボトル
→ PMKJ015MR03 たれなインナーCap 【03】


家に赤子がやってくる

ハッピーバースデー。しかし作業ができない。有毒物質への感受性が特段に高いはずの赤子とは同じ空間内で有機溶媒を撒くなど絶対にできない。

それまで一部の作業は室内で行うこともあったのだが、赤子登場以後は全工程を屋外で完結させねばならなくなった。


このように作業していた
コンプレッサー不要のエアブラシで本当によかった


屋外化したことで塗装の難易度は結構上がる。

  • 全天候性に欠けるので、作業スケジュール調整が大変になった
    • 湿度の高い日、というだけで作業を避ける必要がある
    • 風が強過ぎる日も作業に向いていない
    • 弱い風でもたまに事故って作業中の塗装がこわれる
  • 寒い日は塗料が乾かず重ね塗りに失敗する
    • 夕方は寒くなる前に作業を切り上げないとダメ
    • 無理に寒い中塗装すると塗膜のクオリティが下がる
  • 塗装後、乾燥中の部品に飛来したゴミが付着する
    • 毎回段ボールの覆いをかぶせるようにして解決をはかった
    • でも完璧はない
  • 花粉が多い日は自分がダメ


あと同時期に、クリックボタン部品をマスキング作業中のミスで完全に破断させてしまった。部品がバラバラで塗装はしやすくなったが、エポキシ補修は大変だった。


決めた色で塗り直す

これまで数々の失敗をしてきたのでだいぶ経験値が溜まり、良い群青の塗りが得られた。



また塗膜保護のためには皆トップコートを吹くらしいので、私もそのようにした。
→ C181 Mr.カラー 基本色・コート用 スーパークリアー 半光沢



4ヶ月前に貼り付けたマスキングテープを剥がす。失敗すると必要な箇所の塗膜にまでクラックが入るので慎重にやる。



破壊せずにうまく取れた。

この剥がしたテープ、ここまで吹いてきた何層もの塗料でパリッパリに固くなっていた。


組み立て直して完成

4ヶ月もやっていたので組み直して動いただけでもすげー仕事終わったぜ感が出てくる。そしてやはりツートンはよい。


途中の400系から一気にE8系色になった


補修したクリックボタンのタッチが重くなっていたのでリューターで削るなどもしたが、それでも機能面含めてひととおり形になったのでよかった。塗装のクオリティは改善の余地あり。



Microsoft Trackball Opticalの赤ボールも合う。




おわりです

デスクには紫×黄色なデバイスが増えてきた。どれも色合いが違って綺麗。


追記 2024-05-19

この後ほぼ毎日使用していたのだが、手のひらが常時載っかる部分を中心に、塗膜が徐々にベタベタし始めた。

調べてみると最後に吹いたクリアーはアクリルラッカー系なので皮脂で溶けるかも?(はっきりしない)という話が出てきた。本当なのかな。

とりあえず手元にあったホルツのクリアースプレーがニトロセルロースラッカーだったのでこれを上から吹いてみる。またしばらくは様子見。

→ ホルツ ペイント塗料 クリアペイント A-4 300ml


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